4-6 土壌水分と作物品質
作物品質と土壌水分が密接に関連していることは広く知られています。西宗ら28)は、ビート根中の水分、窒素、糖分の三者の関係について貴重なデータを示しています。西宗らは有機物施用の問題を考慮に入れていませんが、乾性土壌ではビートの糖度が上昇するが、可製糖量(収量と考えて良い)が減少する傾向にあることを示しました。図48-1によると、水分含量が増加すると糖含量が減少し、逆に窒素含量は増加することが示されています。必ずしもこのような三者の相関がきれいに認められない場合があるのはその対象作物に要求される食品としての部位が区々であることによると考えられます50,51)。先に図45-3で見たようにキャベツ、レタス、ダイコンでは窒素と糖含量に明確な負の相関が認められましたが、ナス、キュウリ、トマトでは明確な関係性が認められませんでした。いわゆる「なりもの」では、果房ごとの収穫前の気象や土壌条件による影響が大きいためだろうと考えられます50,51)。
図48-2を見ると、土壌の飽和容水量の60%までは全糖、カロテンともに大きな変化は見られませんが、それ以下の土壌水分になると両成分が急激に上昇しています71)。サツマイモでも、多水分圃場より少水分圃場で糖含量が増加すること、施肥量より土壌水分の方が糖含量に対する影響が大きいことが報告されています150)。間苧谷ら39)は、ウンシュウミカンの日の出前の葉の水分ポテンシャルが高い(水分が低い)ほど果実糖度が高く(図48-3)、果実酸度では、水分はある程度の支配要因にはなりうるが、それが主要因とは考えにくいことを報告しています。
表48-121)を見ると、土壌水分の低下は、トマトの糖度、ビタミンCを増加させるが、生育が悪く、果重の減少による大幅な収量低下を招くことが分かります。吉田67)は、有機質肥料と無機肥料で栽培したトマトを比較し、有機質肥料区は水分は減少し、糖、ビタミンC、有機酸は増加するが、果実の固形分換算によっても同様であったと述べています。水ストレスによる単純な濃縮効果ではないことを示しています。スライド15、38、39、40でみたように、有機質肥料の施用は土壌団粒の発達に寄与します。このことが作物品質改善に大きく影響していると考えられます。 |