2-4 管理来歴の異なる土壌中のアミノ酸濃度
松本ら42)、小田島ら107)は、有機質肥料の施用によってアミノ酸態窒素やリン酸緩衝液に抽出される蛋白様窒素(可給態窒素の本体と考えられている)の量が増加することをみています。
福島農総セの武田19)は、未耕地黒ぼく土に無機肥料(硫安)または有機質肥料(菜種油かす)を施用し、ホウレンソウを栽培しました。ホウレンソウの生育量には差が無く、窒素吸収量は無機区に比べ有機質肥料区で減少し、ホウレンソウ体内のアミノ酸濃度を高めるほどではありませんでした。9月1日に窒素で14mg/100g土壌相当の施肥を行い、土壌中の窒素動態を調べました。その結果、硝酸態窒素は常に硫安区で高く推移し、アミノ酸態窒素は施肥後2週間後の9月15日には有機質肥料区で僅かに高くなっていますが、概ね無機、有機の差はありませんでした(表24-1)。
武田19)は、さらに福島県内の慣行栽培または有機栽培を5年以上継続している圃場から土壌を採取し、ミズナ、引き続きニンジンを栽培しました。慣行または有機栽培土壌に化成肥料または有機質肥料を施用して栽培を行いました。慣行栽培土壌、有機栽培土壌ともに化成肥料施用区で無機態窒素は多くなりました。ところが、無機態窒素の多かった化成肥料区より有機質肥料区で窒素吸収量が多くなる場合が認められました(表24-2)。栽培管理来歴、施用肥料の種類に関わらずアミノ酸態窒素は無機態窒素に比べて非常に少なく、処理による差もありませんでした。ニンジンは、無機態窒素とともに有機態窒素も吸収していると考えられますが、アミノ酸態窒素ではニンジンの窒素吸収量を説明できません。問題はアミノ酸が吸収されるかどうかではなく、土壌がどれくらいの量の遊離アミノ酸を供給できるかということにあるのです2)。 |