1-10 有機質肥料の窒素肥効
有機質肥料の肥効(養分の吸収利用率)については、様々な作物で膨大な数の試験が行われてきました。一部には有機質肥料の方が水稲の籾重が増加した例106)も報告されていますが、公表された研究結果の多くは、硫安や尿素に比較して有機質肥料の肥効(吸収利用率)は低いことが多いようです147, 148, 149)。
有機質肥料窒素の無機化率は60%前後の物が多く、最初から無機態である硫安などに比べて肥効が劣るとされています。このような試験は、戦前から昭和の終わりまでは多数実施されていました。上のスライドは最近の研究として、福島県農試の佐藤13)が2010年に発表した結果を示しました。この試験は窒素供給能の低い未耕地の褐色森林土を用い、ポットでN30kg/10a相当量の肥料を施用し、一度の施肥でコマツナ5作を栽培し、各作の窒素吸収量から窒素肥効率を算出しました。コマツナ5作の合計肥効率は、化学肥料(硫安+CDU)の100%に対し、有機質肥料は80~50%です。米ぬかでは20%にも達していません。無機化速度の遅速と最終無機化量の違いを反映したと考えられます。表中のNU50とは、施用した肥料に含まれる窒素の半量が作物に吸収されるまでの日数で、日数が短いほ
ど速効性であると言えます。施用当作の窒素肥効の目安となる数値です。
図13-1は各作の窒素吸収量の推移を示しています。1作目は多く、作を重ねるに従って窒素吸収量が少なくなっているのが分かります。化学肥料は1作目の窒素吸収量が多い反面、3作以降の吸収量はごく僅かです。一方、有機質肥料は概ね3作目までは肥効の持続が認められます。菜種油かす、大豆油かす、米ぬかでは1作目から5作目まで肥効の持続が見てとれます。有機質肥料は、肥効が弱く、緩効的ですが、種類によっては相当長い期間肥料が効いていると言えます。肥効はやや弱くても、ゆっくり長く効くという性質が高品質農産物生産に有利であると考えられています(後述)。弊社も同様な試験を行い、ぼかし肥の肥効は化学肥料に比べて長く続くという結果を得ています17) 。 |