1-1 有機質肥料の窒素無機化
畑作物が土壌から吸収する窒素の形態は、一般に硝酸態窒素(NO3-N)またはアンモニア態窒素(NH4-N)です。有機質肥料に含まれる窒素は、その大半が蛋白質であるため、植物はそのままでは吸収利用することができません。土壌微生物によって蛋白質はアンモニアに分解され、さらに亜硝酸を経て硝酸に変化することで植物は窒素を吸収出来るようになります。蛋白質などの有機態窒素がアンモニアや硝酸(無機態窒素)に変化する過程を「窒素の無機化」(図4-1)と呼び、有機質肥料の無機化特性を調べることで窒素の肥効を知ることが出来ます。
有機質肥料(有機物)に含まれる成分やC/N等の違いによって無機化に要する時間が異なります。図4-2は動物由来有機質肥料7種、植物由来有機質肥料6種の平均無機化過程が示されています。表4-1は、土壌に施用された有機質肥料の16週間後の無機化率(肥料に含まれる窒素の内無機態窒素に変化した割合)と、無機化された窒素の内硝酸態窒素に変化した割合(硝化率)が示されています70)。有機質肥料の窒素無機化率は概ね50~70%程度です。高いものでも80%、低いものでは40%程度です。速く無機化される肥料ほど早く肥効を現します。最終無機化率の高低は窒素の肥効率(有効化率)に影響します。多くの有機質肥料は、施用後1ヶ月程度の期間は盛んに無機化しますが、それ以降の無機化は緩慢になっていきます。無機化しなかった窒素の行方はよく分かっていない部分もありますが、土壌微生物に取り込まれたり、土壌窒素として長い時間をかけて無機態窒素として放出されてくると考えられています。有機質肥料の種類によって、はっきりした残効が見られる場合もあります。一般に施肥量が多いほど無機化は遅くなる傾向にあります。N20mg/100g土壌(単純計算でN20kg/10a)とN100mg/100g土壌(N100kg/10a)との比較では、無機化率の差は比較的小さいようですが、多肥すると硝酸化成は明らかに遅くなることが分かります。
実験的データでは一部の例外を除いて無機化特性にそれほど大きな違いはありません。しかし、ベテラン農家は感覚的に違いを見抜きます。メーカーは、安易な原料変更(法律の認める範囲であっても)を行うべきではないと思っています。 |