1-7 施肥時期と窒素無機化
これまで有機質肥料は土壌中で微生物等の作用によって分解され、蛋白質などの有機態窒素がアンモニア、さらに亜硝酸を経て硝酸に変えられることで植物に有効な窒素が供給されることをみて来ました。有機態窒素から無機態窒素への変化を「窒素の無機化」と呼び、一定期間に無機化される窒素の割合(窒素無機化率)は有機質肥料の種類によって50~80%であること、窒素の無機化は土壌の温度や水分状態に影響されることが分かりました。とりわけ地温の影響が大きいことも分かりました。そこで実際の畑に施用された有機質肥料について、施用時期を変えた時の無機化についてみてみましょう。
表10-174)は、愛知県豊橋市の実圃場の地温計測データを基に、各月の1日に有機質肥料を施用した時の当月の1ヶ月間の無機化率の予測値(数学的に計算によって求められる)を示したものです。非常に無機化が遅いことで知られる米ぬか油かすとグルテンフィードを除けば、平均地温が約21℃の5月1ヶ月間と平均地温が約31℃の8月1ヶ月間で、最大無機化量のほぼ全量が無機化しています。多くの有機質肥料の最大無機化量は、これまで見てきたように概ね全窒素の60~70%です。夏場に施用された有機質肥料は、施用後1ヶ月以内に含まれる窒素の60~70%が有効化されることを表しています。一方で地温の低い11月では最大無機化量の8割から8割強、平均地温が10℃を下回る2月では、最大無機化量の6割程度に止まっています。寒い時期は植物の生育量も小さいく、養分吸収量も少ないと考えられますが、地温に比べて気温の高い施設栽培では窒素の不足を招く恐れがあります。無機肥料との併用を考慮すべきでしょう。一方、夏期は有機質肥料の窒素の無機化が早く、初期から十分な肥効が期待できる反面そんなに長い肥効は期待できません。米ぬか油かすとグルテンフィードは可分解性有機態窒素量が少なく、無機化速度も非常に遅く、肥料養分を作物に供給するという肥料本来の目的にはそぐわないという見方も出来ます。 |