1-13 有機質肥料の発芽抑制作用
菜種油かすなどの植物油かすは、施用直後に強い発芽抑制作用が現れることが知られています。米澤70)は有機質肥料の発芽抑制、活着阻害作用について詳細に検討しました。図16-1は、窒素で20mgまたは50mg相当量の肥料を全層に施肥し、ダイコン種子を播種し、25℃、7日後の発芽率を示しています。一方のポットは、ポット表面をそのまま開放した状態に、もう一方のポットにはポリエチレンフィルムを被せて密閉した状態で試験を行いました。菜種油かすでは明らかな発芽抑制がみられました。ポットを密閉した状態にすると、より強い発芽抑制が認められました。発芽後の初期生育をみると、有機質肥料である菜種油かすにおいて生育量が極端に小さくなっていました。米澤は、障害の発生は、地上部よりも根に強く現れていたと述べています。
次に有機質肥料の水抽出液を入れたシャーレの発芽床にコマツナを播種し、発芽率をみました(図16-2)。抽出液濃度の上昇に伴って、菜種油かす抽出液の発芽抑制が顕著に現れています。水抽出液を用いたサラダナ苗活着試験でも菜種油かすに最も強い阻害作用が現れました70)。有機物施用による発芽、生育障害の原因については、微生物の代謝産物あるいは有害微生物89)などが報告されていますが、米澤70)は菜種油かすが示す発芽阻害について様々な検討を行った結果、菜種油かす中に発芽・活着阻害物質が含まれる可能性が高いことを示しました。発芽障害の観点からみると、魚かすは安全性の高い有機質肥料であると言えます。菜種油かす等に含まれる阻害物質について、その物質は特定されていませんが、水洗、加熱処理によって阻害が軽減されました70)。また、表6-1では菜種油かすの水抽出液によって土壌中の硝酸化成が強く抑制されることをみました。硝酸化成抑制物質と同一の物質ではないかと言われています。 |