2-8 アミノ酸の直接吸収の可能性②
武田19)は、無菌栽培でコマツナ、チンゲンサイ、キャベツ、ブロッコリー、リーフレタス、ホウレンソウ、ダイコン、ニンジンを供試して、土壌に存在する蛋白様物質(PEON、後述)のアミノ酸組成97)をもとに15種類のアミノ酸混合物の利用能を検討しました。その結果、チンゲンサイ、ブロッコリー、ダイコンにアミノ酸利用能が認められました。
森田ら54)は、グルタミン酸、グリシン、アラニン、リジン、アスパラギン酸のアミノ酸混合物を供試して、チャの水耕条件下でのアミノ酸吸収とチャ地上部への移行を検討しました。その結果、チャはかなり積極的にアミノ酸を利用していると考えられる結果が得られました。森田らはチャにとってアミノ酸は窒素栄養上有効な窒素源となり得る可能性があるとしながらも、土壌中でのアミノ酸の分解、微生物による取り込みなどの点から、実圃場にあっては効果が大きく低下する可能性があるとしています。
先にも述べたように、ツンドラ地帯に育つスゲは無機窒素よりアミノ酸態窒素を積極的に利用しています152)。ツンドラ地帯では地温があまりにも低く、有機態窒素の無機化が極端に遅く、植物が吸収できる無機態窒素が極めて少ない窒素飢餓状態にあります。このような条件でスゲはアミノ酸を積極的に利用していますが、オオムギの生育はアミノ酸より無機窒素の方が良かったことが報告されています。
森ら53, 104, 105, 144)は、水耕栽培によって裸麦を栽培し、硝酸に比べてグルタミン、アルギニンというアミノ酸を多く吸収し、植物体では代謝されていたことをみています。また、水耕栽培イネでは、無機態窒素のみの場合に比べて、無機態窒素+アルギニン(1:1)では低温や寡照に対する補償効果が得られたと報告しています。これらの結果から、森は吸収されやすい炭素源(エネルギー源)と窒素が同時に与えられたことで、光合成産物を根に送る量が減り、光合成産物が効率的に生育に利用されたと考えています。 |