2-9 土壌中アミノ酸の直接吸収と効果発現の可能性
これまでみてきたように、植物はアミノ酸などの有機態窒素を直接利用できることは明らかです。条件によっては、無機態窒素より積極的に利用し、植物体内で有効に代謝されていること(アミノ酸の種類によっては代謝されず蓄積)も明らかです。有効な窒素源としての役割の他、少量のアミノ酸が生育を刺激する場合や低温・寡照などに対して報償効果を現すことで生育を改善する場合があります。ただし、植物の種類とアミノ酸の種類によって効果は異なっていると考えられます。
一方で中国農試89)、山室ら61, 98~103)による一連の研究や野菜茶試と山梨総農試の共同研究104)等は、土壌に施用されたアミノ酸のうち、作物により直接吸収される割合は、非常に低く、一旦土壌微生物に取り込まれ、無機態窒素として吸収していることが示されました。水稲に比べトマトでのアミノ酸吸収量はさらに少ないという結果でした。コムギを用いた試験では添加されたアミノ酸量の94%が根圏微生物によって吸収されたとの報告153)もあります。また、土壌中無機態窒素量では説明のつかない、有機態窒素を積極的に利用していると考えられる場合においても、土壌中のアミノ酸態窒素量は、植物による窒素吸収量をカバー出来るだけの量ではないことは明らかです。
アミノ酸の効果が確認された事例は、水耕栽培における培養液にアミノ酸を添加した場合や、ツンドラ地帯など限られた条件で得られた結果です。また、橋本ら108)によると、豚糞や牛糞の堆肥を10トン/10aを局所施肥した場合、葉菜類でアミノ酸濃度が上昇しました。土壌にアミノ酸を施用した場合の、アミノ酸の直接吸収率はかなり低いという結果が一般的だと考えられます。これらのことから、少なくとも土耕栽培において、アミノ酸が効果をあげる可能性は十分あると思いますが、普遍的とは言えません。有機質肥料とアミノ酸の効果を直接結びつけ、アミノ酸に対して過大な期待や評価は避けるべきではないでしょうか。 |