有機質肥料WEB資料館

新有機質肥料講座(総論編)ページ50/57

スライド50:有機栽培と慣行栽培の品質比較

4-8 有機栽培と慣行栽培の品質比較

有機質肥料を使うことで、必ずしも高品質生産が可能になるとは限りませんが、有機質肥料と無機肥料(化学肥料)との比較において作物品質が改善された例は多数の報告があります。有機質肥料と作物品質について様々な事例から考えてきましたが、ミニトマト2例、トマト、ブロッコリー、メロン、ニンジンを対象とした試験例をご紹介します。

まず、ミニトマトを対象に有機栽培と慣行栽培における品質比較を行った研究をみてみましょう。村山ら47)は、多数の品質関連成分について詳細に調査していますが、紙面の都合で項目を絞って紹介しますが、注目すべきデータが得られています。調査は、2004年と2005年に実施され、山形県と福島県の延べ9軒、16ハウスの有機JAS認定圃場から採取されました。慣行栽培は有機圃場に隣接した同じ作型のハウスから採取され、品種はいずれも千果です。同一圃場における肥料の種類を変えた試験結果ではありませんが、有機栽培ミニトマトと慣行栽培ミニトマトの品質特性を比較した報告だと考えられます。
一果平均果重は有機栽培において有意に大きくなっています。果実の全窒素、アミノ酸含有率には差がありません。味に関係する屈折糖度と糖(グルコース・フルクトース)含有率は、有機栽培において僅かに高くなる傾向にありますが、明確な有意差は認められません。クエン酸は、有意差こそ認められませんでしたが、有機栽培において低下する傾向にあります。栄養成分であるビタミンCとリコペンは有機栽培において有意に増加しています。注目されるのは、果実からのエチレン生成量が有機栽培において有意に低下しています。エチレンは作物の成熟に関係したガス状ホルモンです。エチレンによって成熟が進み、保存日数を低下させることが知られています。エチレン生成量から果実の保存性をみた数少ない貴重なデータです。有機栽培の方が慣行栽培に比べて収穫後の保存性が高いと考えられます。

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有機質肥料と有機質資材の関係 ・・・・・・・・・・ 1
有機質肥料の働きと効果 ・・・・・・・・・・ 2
第1章 土壌中での分解特性からみた有機質肥料の肥効と安全性 ・・・・・・・・・・ 3
第2章 植物による有機態窒素の直接吸収-無機態窒素だけでは説明出来ない植物の存在
一部の植物が直接吸収するPEONの発見、 アミノ酸や核酸は効くのか?・・・
・・・・・・・・・・ 20
第3章 有機質肥料と土壌環境-土壌団粒を中心に ・・・・・・・・・・ 33
第4章 有機質肥料と作物品質-作物品質向上メカニズム ・・・・・・・・・・ 42
4-1 有機質肥料(資材)の施用と作物品質 ・・・・・・・・・・ 43
4-2 有機質肥料と作物体中蛋白含量 ・・・・・・・・・・ 44
4-3 作物品質と土壌管理 ・・・・・・・・・・ 45
4-4 蛋白・糖含量と貯蔵性の関係 ・・・・・・・・・・ 46
4-5 糖が栄養成分を高める ・・・・・・・・・・ 47
4-6 土壌水分と作物品質 ・・・・・・・・・・ 48
4-7 水ストレスは植物に何をもたらすか ・・・・・・・・・・ 49
4-8 有機栽培と慣行栽培の品質比較 ・・・・・・・・・・ 50
4-9 有機質肥料による品質向上事例① ・・・・・・・・・・ 51
4-10 有機質肥料による品質向上事例② ・・・・・・・・・・ 52
4-11 作物品質向上メカニズム ・・・・・・・・・・ 53
有機質肥料・まとめ ・・・・・・・・・・ 54
巻末解説(古細菌) ・・・・・・・・・・ 55
参考文献・引用文献 ・・・・・・・・・・ 56
後書き ・・・・・・・・・・ 57

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