1-12 有機質肥料の連用効果(ハウス)
露地においては、有機質肥料区の収量は無機区に及びませんでした。この結果は、有機質肥料の窒素無機化特性の影響だと考えられました。では、ハウス栽培ではどうでしょうか。米澤70)による20作に及ぶ有機質肥料連用試験の結果をみてみましょう。図15-1は、各作の無機肥料区の収量を100とする有機質肥料区の収量指数の変化を示した図です。初作のメロンを除けば有機質肥料区の収量が無機肥料区より高くなっています。露地とは異なった結果が得られています。概ねホウレンソウやセルリーで、増収効果が大きく、トマトやキュウリでは無機区との差が小さくなっています。
土壌化学性の推移を見ると、無機区の土壌pHが有機区より常に低く推移し、電気伝導率(EC)は高く推移しています。無機区は硝酸含量が常に高く、pHの低下とECの上昇をきたしたと考えられます。露地では、有機質肥料の窒素無機化に影響された結果、有機質肥料区の収量は無機肥料に及びませんでした。反面、多肥になりやすく、表土に塩類集積を起こしやすい環境にあるハウス栽培では、無機態窒素の供給が緩効的な有機質肥料が有利であったと考えられます。米澤70)は、生育、収量、養分吸収量、品質、土壌の理化学性に及ぼす影響を詳細に見ています。コマツナ、セルリーでは、有機区の窒素含有率が低く、リン、カリウムは高くなっていました。品質面では、糖度、ビタミンC、クロロフィル等が有機区で高く、保存性にも優れていました。土壌理化学性の面では、試験開始前原土のCECは31.3me/100g乾土、無機区平均では32.8me/100g乾土に対し有機区のそれは36.3me/100g乾土でした。大型団粒生成割合が有機区において常に高く推移しています。これは生育のみならず収穫物の品質向上に有利に働いたと考えられます。土壌物理性と品質、有機質肥料による団粒生成促進効果については後ほど詳しくみていきます。 |