2-5 アミノ酸の施用効果
アミノ酸の施用効果については古くから報告されています14, 84)が、図25-1は、水耕トマトと土耕裸麦に対するアミノ酸の施用効果をみたものです。青色のバーで示した結果は、1/2濃度園試処方水耕液(N125ppm)にNで2ppmに相当する濃度の単一アミノ酸を加え、トマト幼植物の生育をみた結果です。培養液は2日毎に全量更新し、アミノ酸の分解が最小となるよう考慮しました。アミノ酸の種類によって、アミノ酸無添加区と比べた生育に差を生じました。アミノ酸の種類によって、トマトの生育は促進あるいは抑制されました。慎ら92)は、無機態窒素10ppmを含む培養液にアミノ酸を窒素で2ppm相当量添加して、水稲の無菌栽培を行いました。その結果、γ-アミノ酪酸、グルタミン酸、グリシンは生育が変わらないか、促進され、フェニルアラニン、プロリン(環状アミノ酸)、メチオニン(含硫アミノ酸)では生育が抑制されました。慎らとは作物が異なっていますが、一致した結果でした。さらに、慎ら93)は、水稲体内で、グルタミン酸は速やかに代謝されるが、プロリンは代謝されず蓄積されるという結果を得ました。以前から効果の高いアミノ酸として、プロリンが取り上げられることが多いと思いますが、再考した方が良いかもしれません。土壌にアミノ酸を施用した時のトマトによるアミノ酸の吸収率は、水稲より低く、吸収した窒素の数%であったとの報告があります89)。少なくとも水耕栽培という条件において、トマトが経根吸収したアミノ酸がトマトの生理に何らかの影響を及ぼしている可能性があります。アミノ酸を植物の窒素源
として捉えた場合の土壌存在量は無視しうる量です(後述)。水耕条件で得られた結果が土耕にも当てはまるかどうか疑問ですが、先の2つのスライドでみた量のアミノ酸が常在すれば何らかの効果が得られるかもしれません。
えんじ色のバーは、森52)が土耕裸麦で行った結果です。単一アミノ酸を唯一の窒素源として施用し、裸麦が作付けられました。アミノ酸の種類によって硝酸ソーダに比較して増収する場合と、減収する場合がありました。土壌に施用されたアミノ酸は、速やかに分解消失するようです89)。植え付け時に、唯一の窒素源としてアミノ酸を土壌に施用、収穫期に調査した結果です。増収するアミノ酸もあれば、枯死するアミノ酸までありました。アミノ酸の直接的効果とみることは困難ですが、この結果をどう解釈すべきか? |