2-6 核酸類の施用効果
核酸は生物共通の遺伝に関与した物質です。核酸には大きく分けてデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)がありますが、古くから核酸関連物質が示す植物に対する生育促進効果等が報告されています14, 84, 85, 86)。森52)は、土耕の裸麦に窒素源としてRNAを与え、非常に興味深い結果を得ました。図26-1をみると、RNA区は尿素または硝酸ソーダに比較して非常に高い増収効果を示しています。土壌に施用されたRNAは微生物作用などで容易に分解するだろうと考えられます。そこで、森はRNA施用直後の土壌と、RNA施用後一定期間経過した土壌(土壌中でRNAは分解していると考えられる)に裸麦を作付けました。RNAを構成するヌクレオシド混合物でも試験を行いました。ヌクレオシドはRNAを構成する部品です。RNAが土壌中で分解される過程でヌクレオシドが存在している可能性があります。図26-2を見ると、RNA施用直後、土壌中ではRNAが分解しているであろう時間経過後に作付けても高い増収効果を示しました。ところが、RNAを構成する部品であるヌクレオシドでは、全く効果が現れていません。森は、水耕実験でもRNAの顕著な肥効を確認しています144)。
土壌に施用されたRNAが長時間安定に存在していることは考えにくいことです。ところが森の結果では、ヌクレオシドでは効果がなく、RNA施用後一定期間培養した後に作付けても施用直後に作付けた場合と同等の収量が得られました。植物根はヘモグロビンのような巨大分子を取り込み、消化する機構をもっています2,
91)。演者は水耕培養液にN2ppm相当量のRNAを添加すると、トマト幼植物の生育が約20%促進されました(未発表)。ヘモグロビンに比べれば遥かに小さなRNAを吸収・利用していることは否定できません。近年、無機態窒素より有機態窒素を優先的に吸収する植物の存在が
指摘されていますが2)、このRNAで得られた結果は、植物による有機態窒素の吸収・利用という事柄では説明できないように思われます。この結果は大量のRNAが施用されています。普遍的に起こりうる現象かどうかは疑問ですが、興味深い結果です。 |